社長さんインタビュー

[力強い発展と確実な継承!]

宇陀化成工業株式会社 代表取締役社長 栗林 浩二

(住所:奈良県宇陀市榛原篠楽 117-1  TEL:0745-85-3001 )  




万葉の初瀬の里の東、峠を南に少し下った山あいに、プラスチックフィルム製造会社、宇陀化成工業株式会社が在る。晩秋の長雨がやみ、時折日の光がさす寒い朝に訪れた。門を入ると、左手に工場主棟、正面にこれに連なる入出荷場があり、塵一つ無い舗装ヤードを右折すると、右手に事務棟がある。明るく、静かで清潔な事務所では、一隅のスチール製事務机で、社長が執務中であった。



事務員の方の丁寧な案内で、社長室に入ると、使用形跡の無い立派な机と椅子があるが、もっぱら応接と打合せに用いている部屋だという。社長と挨拶を交わすと、第一声は「隠すことは何もないので、なんでも聞いてください」。




01宇陀化成工業㈱の生い立ち

02宇陀化成工業㈱の概要

03宇陀化成工業㈱の企業理念と具体策

04社長の思考の源泉

0521歳で宇陀化成工業㈱に入社して感じた事

06新社長による社内改革の実施

07躍動する事業

08インタビュー後記


以下、社長さんインタビューの内容を詳述する。



宇陀化成工業㈱の生い立ち

1969年 現社長の父、栗林道治氏(現会長)が、包装資材加工販売(プラスチックフィルム原反は購入)の栗林商店として大宇陀に起業。
1975年 インフレーション成形機を導入、ゴミ収集袋等製袋品も製造(原料購入・混錬・原反製袋・製袋)をはじめた。
1987年 現社名の会社を創立。当時の従業員8名。
2002年 現社長が宇陀化成工業㈱に入社(当時21歳)
2008年 現在地に本社工場を移転。製袋設備を増強し、操業開始。当時の従業員15名。新工場稼働の2か月後にリーマンショックにみまわれたが、従来のゴミ収集袋に加え産業用プラスチックシートの生産に注力した。
2009年 プラスチックシートの生産も寄与し、注文が急増し工場はフル生産状態に回復した。
2011年 現社長が代表取締役社長に就任(当時30歳)
2015年 その後、毎年生産出荷が順調に伸び、今では、月産380t、年商10億円を超える業態となった。従業員も増え、24人になった。インフレーション成形機 16台、製袋機 12台、印刷機6台で月産500tの能力を擁している。

特に、円安になって、輸入材料・製品の価格が不安定の中、廃プラ再生ペレットの
100%使用による原材料の量・価格の安定も、売上増に良い影響を及ぼした。現在,オリンピック以後の景気低下を考え、輸出も視野においた新製品(高難燃フィルム)の試作・試験を行っている。 (「まだまだ伸ばす余地のある会社」と、社長の将来ビジョンは、広大である。)



宇陀化成工業㈱の概要


宇陀化成工業㈱は、再生原料(ペレット)を100%使用し、ごみ収集袋、建築用養生シート・農業用畦シートを初め、各種着色シート、防錆フィルム、耐候・帯電防止・難燃・不燃等各種フィルム、その他多用途の各種フィルム製品を製造・出荷をしている。フィルムの厚み・大きさについても、顧客の要望に応えている。

執務中の社長


製品のエコマーク、奈良県リサイクル認定等を取得し、自治体・公共企業等への供給も多い。ただし、直納は無く、商社経由である。また、原料混錬・成形・巻取り・印刷・製袋の必要作業工程を一貫して行い、原料選択と製造条件管理の工夫にて、バージン材(新原料)使用の他社製品と遜色無く、むしろ高品質と、顧客に喜ばれる。 リサイクルペレット業者36社より、毎月30~40種類400tを入荷、1ロット25kgごとに性能を見極める。8種類程度を添加剤とブレンドして成形機に送る。原料の判定・ブレンドと、インフレーション成形条件調整がフィルム製造技術の核心である。 工場内は、作業しやすく設備のレイアウトがなされ、安全にも最大限の留意と施策を講じ、小学生等の見学行事も多い。


再生ペレット混錬
インフレーション成形
印刷




宇陀化成工業㈱の企業理念と具体策: 「信頼」を常に念頭に置いた経営

再生原料の使用による環境に優しい製品の提供:原料仕入れは社長の業務
・国内廃プラ材からの再生ペレットを100%使用
・継続購入により業者の信頼を得て、原料の安定入手。
・入荷原料管理と厳格な配合調整による品質と価格の安定確保
顧客の満足する製品を提供し、顧客の信頼を得ること
・安定した品質・価格の製品提供、確かな在庫管理による納期厳守。
・顧客ニーズに応じた対応;機能・形状・サイズ・デザインの要望に応える。
・新規顧客・ユーザーには、工場を訪問していただき、管理状況と設備・従業員をみて頂く。
従業員が安心して働くことのできる会社つくり:従業員の夢の実現をサポート
・就業条件の改善、安全作業対策実施
・教育・資格取得の推進。
技術の継承
・材料判定・配合選択感覚のOJT、原料・配合の記録管理
・設備の管理・改善(中古機の目利き・改修)
・作業マニュアルの整備
新製品・新技術 開発
・新しい用途・機能の製品、輸出可能な特殊製品 等の開発。
・高性能設備導入・改善による品質と生産効率の向上。


上記項目は、互いに関連しあい、結果として環境にやさしい製品の拡販、会社の伸長、従業員の福利厚生に繋がる。会社が大きくなれば、規模に応じて組織・システム・人について継続的に変革していかねばならない。(社長の将来ビジョンは、限りなく広がる。)



社長の思考の源泉:感性・知識・経験・決断力・実行力の源

34歳の華奢な体格の社長が、これほど自信をもって企業理念・方針を語る源は、どこにあるのだろうか。生い立ち、経験を尋ねた。

小学生のころ(1990年代)、自宅の廻りに友人がいないため、工場の作業場が日常の遊び場であり、手伝いもした。自然に家業を理解したと言える。廻りの人々から、「跡継ぎ」と言われ、その気になっていたのかも知れない。従って、通常の小学生らしい将来の夢を持っていたという記憶が無い。
持病のある父を思い、家業を早く手伝うことを考え、専門学校で流通マネジメントを専攻、販売士の資格を取得。
専門学校卒業後、大阪の工業用ゴム製品の製造(原材料から成形)・販売会社に就職し、志望して営業を担当させてもらった。この2年余りで、企業のあるべき姿の一部を学んだ。
イ. この会社は、大手企業との取引があり、パナソニックをモデルにしてルール作りをしていた。父の経営する会社は、就業規則も無く、品質・納期・コスト・安全などの基本的ルールが整備されていない。大企業に見習うべき多くのことを知った。 (組織・システム・人 の重要性)
ロ. 納入したゴム製品に成形バリが多いと客先から指摘があり、バリ取り作業を必死で行い、再納した。この件を、当然上司には報告したが、上司は社長にまで報告することはないとのことだった。後日、社長から報告の無かったことに対し大目玉。当の客先の社長との面談で本件が話題となった由、重要な顧客のうちの1社であった。 (品質・納期、信頼、報連相 の重要性)
ハ. OEM製品を納入したところ、客先から呼びつけられ、「寸足らずの製品が1個見つかった」とのことで、大喝され、同時納入の製品3000個を返品された。社に持ち帰り、自身で全数寸法を確認したところ、客先指摘の1個だけが寸法不良だった。翌日、全品揃えて、客先に受領してもらえた。(販売する物の品質、信頼の重要性)




21歳で宇陀化成工業㈱に入社して感じた事

工場をみて廻り、自分の理想とする「企業」との違和感を強く感じた。

イ. 再生原料使用の製品(ゴミ収集袋)に品質粗悪が一部有り。しかし、再生原料使用とのことで、顧客に採用してもらっていた。(品質、技術への違和感)
ロ. 在庫管理が不備で、欠品が多数ある。(生産・納期の管理意識に違和感)
ハ. 生産現場での作業者は、作業帽もかぶっていない。(安全、作業規律への違和感)
ニ. 事務改善の一つとして、PCを購入し、生産・出荷と在庫の数量を毎日in-putし、製品別出荷状況をグラフ化、可視化したが、従業員にうまく浸透できなかった。(従業員の業務意識への違和感)




新社長による社内改革の実施

2011年、30歳で社長を継承後社内改革を実施した。

① 現場幹部に対して、経営的発想を持って業務を推進するように指示
② 2年計画で組織変更 各人の役割分担の明確化
③ 従業員の就業意欲向上対策の実施
  時間管理の厳格化、福利厚生制度の制定、従業員教育
④ 設備更新と新製品開発、生産効率向上
⑤ 当社の企業理念に基づいた改革



躍動する事業

 宇陀化成工業㈱は2009年4月リーマンショックから5カ月経過後あたりから徐々に注文が回復している。世間ではリーマンショック前の40%操業度の時期である。しかも現社長は(当時は専務)ゴミ袋製造専業に加え産業用フィルムの増産に踏み切り、経営の安定化を目指した。
 また、この時期に養生シートの大量受注に成功し、2010年には大型インフレーション成形機を導入し2,350mmのシートの生産を可能にしている。また、自社製品の海外市場への展開、それに伴う新製品の開発、工場の増設・拡張も社長は見据えている。 まさに、事業が躍動している感がある。




[インタビュー後記]

社長の発想の原点は、顧客・従業員・業者・社会の信頼を得ることの重要性の認識にあるようだ。社長は、話の中で、先代社長を含む家族、従業員、業者、顧客 への感謝の気持ちと信頼の重要性を何度も表現しており、心の内に全てを思いやる優しさを感じる人柄である。 昨今、オーナー企業の後継者問題が話題になることが多いが、宇陀化成工業㈱の場合は、先代社長の深慮と、現社長の自覚と信念、加えて、若い社長の熱意に共感する優秀な社員の存在が、世代交替を成功させたと思われる。宇陀化成工業株式会社殿の今後が大いに楽しみである。   ご多忙中、長時間のインタビューに、忌憚なくお話しいただいた、栗林浩二社長に感謝し、益々のご発展を祈念いたします。


参考: ・2015年(平成27年)11月毎日新聞奈良版「ならの底力!元気企業を訪ねて」に宇陀化成工業㈱が上下2回に亘って取り上げられている。
・宇陀化成工業㈱のHPには、設備・製品・製造方法について詳しく記載されている。
・NPO法人 ATAC・MATE奈良のHP、「奈良のキラリと光る元気企業・50社」(2011年)の中に宇陀化成工業㈱が紹介されている。
         
インタビューで聴取できなかった事項については、上記の記載を参考にした。 
                                         
NPO法人 ATAC・MATE奈良  曽根 成典












[バックナンバー]

「ITなんでもござれ!」あずやん株式会社 代表取締役 東 正幸